私は2016年4月より麻酔科部長を拝命いたしております。
東京歯科大学は、明治23年(1890年)に高山紀齋が歯科医学を教授するために東京の芝の地に高山歯科医学院として開設した、わが国最古の歯科医学教育機関です。医学院設立10年後に血脇守之助がこれを受け継いで東京歯科医学院と改称し、水道橋に本拠を構えました。その後、明治40年(1907年)に専門学校に昇格を果たし、昭和21年(1946年)には歯科医学専門学校として初めて大学(旧制)として認可されました。そして、2010年には本学は創立120周年を迎えることができました。
市川総合病院は、昭和21年に東京歯科大学の附属医療機関として開院されました。建学者の高山紀齋と血脇守之助は、歯学と医学は不可分であるとの理念を持っており、当院は、開院当初よりその理念に沿って歯科医師と歯科学生の医学教育を担っております。その後、時代を経て病院の規模拡大に伴い、市川市の地域医療を担うようになり、さらには医育機関としての役割を果たすようになって参りました。
市川総合病院麻酔科は、平成5年に滝野善夫が初代部長として就任して以来、周術期の安全で快適な医療を提供することを第一の目標としております。これに併せて、小板橋俊哉部長の時代以降は、学生・研修医・専修医の教育と臨床研究にも、一層の力を注いできております。東京歯科大学建学の精神である「継承と発展」に則って、医療・教育・研究の質の向上を、さらには働きやすい職場を目指して努力してゆきたいと考えております。
大学の付属病院でありながらも、大学医局とは異なり入局制度を設けておりません。そのため、人事異動や雑用もなく、個々の先生方のスキル、状況に応じて「アレンジ可能な麻酔科後期研修医としての研修」あるいは「麻酔科医としての人生」を送ることができる環境になっております。
当科では個々の意見・意思を尊重しておりますので、関連病院への出向等の心配はございません。逆に要望があれば、他院で興味のある症例のために研修を受ける事も可能です。その場合には、研修後当院へ戻って来る事も出来、実際にそういった先生も複数名います。
私が研修を受けていた頃ある先輩に「教育しないことが教育だ」と言われたことがあります。しかし、それでは知識の均てん化(高いレベルで平均化)を図ることはできません。特に麻酔科分野はまだまだ発展途上であり、数年スパンで新たな薬物や機器が登場しており、この流れに乗り遅れることは麻酔科医としての旬を失うことになります。ですので、麻酔に関しては継続的な卒後研修が必須だと思います。「これで自分は充分だ」と思うことは成長を止めることになりますから、当科においては種々の学習機会を設けています。
専門医取得を目指すだけではなく、専門医を維持するためにも効率良く教育を受けられる環境を整えています。当麻酔科の研修システムには多くの賛同者があり、某大学教授は当科のシステムをそのままご自身の医局で採用しています。
どんな若手であっても人間として尊重することは基本です。上下の隔てなく何でも話せる家庭的な雰囲気は他者の尊重から生まれるものです。スタッフ紹介でそれぞれのスタッフが書いている声をお読み頂ければ、実際に察して頂けると思います。